八国山だより DIGITAL MAGAZINE P.2-3
東京という地層装置
東京は、地下に何を隠しているか。
われわれが立つこの都市は、けっして平坦な現在ではない。
むしろ、一万年の時間を垂直に積み上げた「地層状の存在」である。
関東大地震の後、人々は焼け野原から立ち上がり、
コンクリートと鉄筋で過去を埋め尽くした。
だが、地下一メートルを掘ると、
昭和の遺骨が、
大正の水没した村が、
江戸の下水が、
中世の合戦跡が、
そして縄文人の手のぬくもりが、
いまなお沈黙のうちに存在している。
八国山——武蔵野台地の一隅にある、
標高66メートルの雑木林——
この場所は、東京という都市システムが、
いかにして過去を「上書き」し、
いかにして空間を「編集」してきたかを示す、
完璧なるノード(結節点)である。
本誌は、八国山に立ち、ブラウザを開き、
スマートフォンのGPSが指し示す現地で、
一万年の地層を「同時にめくる」という、
前代未聞の編集実験の記録である。
技術は記憶の敵ではない。
むしろ、現代の工学は、
太古の沈黙を、ふたたび言葉にする最強の鍬(くわ)なのだ。
- Marginal
- 地層 = 時間の物質化
- アースダイバー的問い
- 編集 = 時間と空間の再組織化
- 関東ローム層:40万年前の火山灰
- 武蔵野台地:縄文海進以降の堆積地形
- 八国山の標高:66メートル
- 東京の地下水位:現在 -5〜-10m